実態に合わない

なぜ政府は実態に合わない資格制度としたのだろうか。
設備技術は他省庁とも係わるため避けたのだろうか。
実態に合わなければ責任も持ちきれないが、行政としてはその責任資格者を設けておけば言い訳が立つというだけだろうか。
政府が設備技術者も一級建築士を前提とした訳は何だろう。

「改正士法施行 新制度への期待と不安」建築設備技術者協会会長 牧村 功
(一部抜粋)

  1. 小規模事務所は淘汰されるという可能性をはらんでおり、それが業界の中で社会的問題に発展する可能性もある
  2. 構造、設備設計一級建築士の関与を必要としない建物についても、その資格者がいるところに発注するクライアントが増える可能性もある。従来通りの発注を地方自治体やクライアントがやってくれる保証はない。来年、再来年と、資格者の確保が設備設計事務所にとっては死活問題になってくる。一級建築士を前提とした制度設計がこうした問題の背景をつくってしまった。
  3. いま建築設備士は約3万3000人いる。その人たちが図面を描いているのが実態だ。建築設備士は、建築系、機械系、電気系を学んだ人が混在しているが、過半は建築学科以外の人。設備設計一級建築士になるためには、一級建築士の有資格者という前提があるが、建築学科を出た一級建築士が本当に電気の専門的なことを理解した上で設計、法適合確認をできるかといったらそうはならない。にもかかわらず、法令上は空調衛生、電気の専門家がつくった図面を設備設計一級建築士が法適合確認するという位置付けになっている。
  4. 設計行為は建築設備士に任せ、法適合確認だけ設備設計一級建築士に任せるという業務分担の明確化も運用上はできる。ただ、建築設備士に何の責任もない形で仕事をさせていくわけにもいかない。最終的には建築設備士も業務権限がある資格に持っていかざるを得ない。世界的にみても、メカニカルエンジニアとエレクトリカルエンジニア、ストラクチャーエンジニアに細分化し、実態に合わせて設計している。そういった世界の潮流にあった制度でなければならない。
  5. 構造にはピアチェックがあるが、設備は申請した後にチェックがない。自治体にも設備の技術者がほとんどいない状態の中で、建築主事にチェックする能力はない。技術的なことをチェックするということは、従来もなかったし、こらからもないだろう。ならば設備設計一級建築士がすべての責任を取ることになる。最終的には空調衛生、電気の専門家として建築設備士が責任をもっていくような制度に変えていかないと実態に合わない。
  6. 告示1206号の見直しについても、今までは下請けで泣いていた設備設計事務所にとっては朗報だ。業務量が明確になればそれをベースに議論することができる。告示に実効性をもたせるために、発注者が『守らないと手抜きをされる』という意識を持つことが大事。まずは自治体が率先してこうした意識を持ってもらいたい。