インスペクター(住宅検査官)制度
安全な住宅を確保するための提言┃日本弁護士連合会┃2006年2月16日
- 建築士からは,住宅検査官は建築士に対する性悪説を前提にしているとの批判が予想される。
- しかし,住宅検査官制度は建築士の優秀さを証明する制度であり,工事監理等の手抜きをしているのではないかという疑いを晴らすための制度と発想を転換すべきである。
- 例えば,アメリカでは,すべての建築物は,公的建築物については州,それ以外の建築物については市の公的インスペクターによる検査を受けなければならず,
- また一定規模以上の建築物や公共建築物などは,これに加えて登録されている民間のスペシャルインスペクターが現場に常駐して日々厳しい検査を行っている。
- インスペクターの権限は非常に強く,戸建住宅等にあっては建築工事中重要な工程で6回前後現場に赴いて検査し,一定規模以上の建築物は日々現場での検査を受け,インスペクターの許可がなければ次の段階の工事に進むことはできない仕組みになっている。
- 特にインスペクションを受けなければ構造躯体を塞いではならず,塞いでしまうとこれを取り除くよう命じられる。
- 改善を必要とする箇所が発見されると改善指示書が渡され,現場には赤紙に黒字で「STOP WORK」と書かれた札が貼られて工事がストップされる。
- 施工者は改善指示に従って改善し再度インスペクターの検査を受けることになり,同じ箇所で2回改善が指示された場合には罰金が科される。
- また,インスペクターは強い権限が与えられると同時に,重い責任も課せられている。
- 継続的な監視がより必要な一定規模以上の建築物の工事では,スペシャルインスペクターが現場に常駐することが義務づけられている。
- スペシャルインスペクターは,任務懈怠等があると建築主に対して責任を負わなければならない。
- また公的インスペクターはスペシャルインスペクターの業務を監督し,資格を取り上げることもできる。
- 我が国の建築主事は,全国に2000名足らずしか存在せず,
- また,これを補佐する職員も短期間に配置転換が繰り返されるなど,専門性を身に付けた職員が建築物の安全性をチェックする体制が確立しているとは言いがたい現状にある。
- これをアメリカと比較してみると,例えば人口350万人のロサンゼルス市の建築安全局には職員が850名存在し,そのうち我が国の建築主事に該当するシティインスペクターは450名も存在し,彼らは自ら確認業務や現場検査を行うとともに,約1200名のスぺシャルインスペクターを指導監督しているのと雲泥の開きがある。
- 我が国でも,建築物の安全確保にかかわる職員や建築主事の人員増強,待遇改善など,建築主事とその職員が積極的に安全性の守り手として活動しうる環境を整備すべきである。
http://www.nichibenren.or.jp/ja/opinion/report/060216_2.html