建築士とは?

  • 弁護士法 第一条 弁護士は、基本的人権を擁護し、社会正義を実現することを使命とする。
  • 医師法 第一条 医師は、医療及び保健指導を掌ることによつて公衆衛生の向上及び増進に寄与し、もつて国民の健康な生活を確保するものとする。
  • 建築士法 第一条 この法律は、建築物の設計、工事監理等を行う技術者の資格を定めて、その業務の適正をはかり、もつて建築物の質の向上に寄与させることを目的とする。

。oO( 建築士法の目的は、人でも無く生活でも無く建築物に対するもの。その建築物の社会的な位置付けは謳われていない。建築物の発注者の意のままとも言える。それが要因で街並みも創られないのだろう。実際に建築士という資格は建築関係者ならば一般教養的に取得しておいたら良い程度のもの。建築士は、ただ戦後経済復興の建設のための要員だった。6.20でも「消費者」からの視点でしか無かった。

第165回国会 国土交通委員会 第6号(平成18年11月29日(水曜日))
日本建築士会連合会の宮本 忠長氏の発言から抜粋

  1. 現在、建築士の登録者数というのは、御存じだと思いますが、百万名をちょっと超しております。これはなぜかと申しますと、士法ができまして約六十年間の間に、要するに登録をするということにおきましての数でございまして、現在、実務を離れている人や、それから、亡くなってしまわれた方とか、あるいは、代がかわりまして建築士活動をしていない、そういう人が大勢いらっしゃいまして、一級建築士二級建築士木造建築士というものを総合しますと、推計、活躍しておられる建築士は大体五十万から六十万ぐらいの間ではないかと推測されるわけです。
  2. 正確には、十八年の、ことしの三月末現在で、一級建築士が三十二万、それから二級が六十九万、木造建築士が一万四千というふうになっておりまして、トータルで百三万ということになるわけです。
  3. 職業が、建築士の場合には、実態は建築関係の異業種の集まりであるというふうに私は考えております。と申しますのは、設計を専門にやる人、それから工事を、施工をやる人、それから構造計算をやる人、それから設備の設計をやる人、あるいは大学で教育関係にいらっしゃる人、あるいは法令といいますか、そういう法令関係の方、そういういろいろな方々がいらっしゃいまして、建築士の資格を持って建築士会を構成しております。
  4. 建築士法そのものは、先ほども申し上げましたが、建築異業種の皆さんの集まりでございまして、非常によくできている法律だと思っております。これは国際的にも大変評価されているシステムでありまして
  5. 設計という行為は非常に広範囲でございますから、構造やそれから設備やそれから施工とか、それから法規はもちろんですが、非常に広い分野の技術というものの専門家、あるいは、そういったものを全部ある程度自分で理解して、その総合が設計という業務だと思っています。
  6. 設計という業務は、独立して設計だけがあるのではなくて、そういったいろいろな技術の分野を統括するというのが設計の行為だと思っておりまして、そういう意味では、建築士会が、そういうような技術分野の人と交流ができる、情報交換ができるということで、私どもは、士会連合会の役割がそこに特徴としてあるのではないかというふうに思っているわけです。
  7. 建築異業種の集まりでございますから、一般の人から見ますと、この人は設計をやっているか、この人は工事の専門家、これはなかなかおわかりにならないわけです。
  8. 一般の人から見て、建築士が、何でもやるんですけれども、何にもできないのではないかというような、そういう不信感も確かにありました。そういうこともありまして、専攻制をつくりました。
  9. 建築士資格の専門性につきまして、構造設計一級建築士と設備設計一級建築士を認定し、法適合チェックの義務づけを規定したことは、適切な処置と受けとめたいと思っております。

日本建築家協会の仙田 満氏の発言から抜粋

  1. もともと建築の設計というのは、国民の生命財産を守り、かつ文化的な仕事であります。国によってはその法人形態を、弁護士や医師と同じように、株式会社という形ではなく公益的な法人として位置づけているところも多いわけでございます。
  2. 一九五〇年、昭和二十五年に現在の建築士法がつくられたときに、この士法は昭和二十五年四月四日に、衆議院議員の、その当時の田中角栄さんを初め七名の衆議院議員の先生方による議員立法であったわけでございますが、そのとき、「建築士法の解説」というのが出されております。その第四に、建築士法制定の経過と今後の問題というところに、もう既に、欧米におけるアーキテクトは、ストラクチュラルエンジニアに対して、意匠や設計を主としてつかさどるものと考えられている、将来的には、構造、設備を専門とする建築士、設備士のような資格を分離することを検討する必要があるというようなことが述べられております。
  3. 一級建築士で三十万、二級、木造を入れると百万の登録がありまして、これは極めて多いと考えられます。構造、設備というエンジニア、さらに建築施工、生産にかかわる人たちも包含しているからでありまして、日本建築家協会は建築家という建築設計を行う人を限定すべきだと主張してまいりました。
  4. 日本の建築士が多い、人口四百人に一人。世界的に見ますと、大体二千人に一人です。中国なんかは日本の大体百分の一ぐらいという形で、隣の韓国でさえも、大体人口六千人に一人というような数字であります。ちなみに、人口二・五倍、国土二十五倍のアメリカでは、ライセンスアーキテクトは十万人ということであります。
  5. 国民の皆さんに、この人が建築の設計を責任を持ってやってくれる建築家かどうかということは、一級建築士という資格だけでは今や判断できないという状況になっています。そういう意味で、やはり私たちは、世界的にも建築家と構造、設備の設計技術者はアーキテクトとエンジニアという形で分離されていますが、そういう形にすべきであるというふうに主張しているわけであります。
  6. 姉歯建築士によるこの事件も、多過ぎる建築士が過当競争を生んであのような事件が起きてしまったということも言えるのではないかと思いまして、やはり建築設計をする建築士を絞り込む必要があるというふうに考えています。
  7. 国交省の基本制度部会でも、新たな建築士という形で全建築士をふるいにかけるという提案は、日本建築家協会は賛成したんですが、これは反対に遭いまして、最終的な報告書には載らなかったわけでございますが、今回の士法改正も、建築設計士を絞り込む方向を目指しているということは評価できるのではないかというふうに思います。
  8. 設計というのは総合的で統括的なものなんですね。やはりそういう建築士をきちっと認定する必要があるというふうに私たちは考えております。
  9. 構造、設備技術者については、現在は一級建築士の枠の中に含めておりますが、実際に、例えば設備技術者は約三万五千人というふうに言われておりますが、そこで一級建築士の資格を持っているのは二千人しかいないという状況であります。そういう意味でも、構造、設備については、そういう点で一級建築士の枠の中に入れるというのはやはり問題ではないかなというふうに私は思っております。
  10. 設計施工一貫、すなわちゼネコンの設計でも設計者の独立性を担保する必要があるというふうに思います。すなわち、設計契約をきちっと交わして、設計者としての責任を明確にすべきだと主張しております。
  11. 確認申請書に必ず設計契約書を添付しなければ受け付けないという形にすることによって、より実効あるものにできるのではないかなというふうに思っています。
  12. 今の日本の設計の業務環境が極めて悪化しているわけですが、これは二つの理由があって、一つは官工事における設計入札、それから民間の工事におけるサービス設計だというふうに思っております。設計をサービスやただで行うという慣習が特に設計施工一貫の場合にはかなりあるというふうにも聞いております

新建築家技術者集団の本多 昭一氏の発言から抜粋

  1. 新建という団体は、建築士、建築家だけでなくて、名称にありますように建築技術者も含んでおります。設備の技術者、電気の技術者なども含んでいる団体です。
  2. 現在は、設計施工一体というか、一社でやることも合法というふうになっております。この辺に一つの問題があるというふうに感じております。
  3. 今回の改正を臨時的、応急的なものというふうに位置づけて、割り切ってすべきではないかというふうに思っております
  4. 従来からさまざまな問題があるものを解決するんであれば、国交省所管だけでなくて、他の省庁、ここに書きましたように、環境省厚労省経産省文科省法務省など、全体で取り組むというような構えが必要であります。
  5. 基本的に考えるんであれば、まず第一条から書き直さなければいけない。建築士法の第一条は、ここに書きました、下の方ですが、「建築物の設計、工事監理等を行う技術者の資格を定めて、その業務の適正をはかり、もつて建築物の質の向上に寄与させることを目的とする。」これだけ書いてあるわけですね。これだけでは、建築士がやるべきことがほとんど見えないわけであります。
  6. 例えば弁護士法ではこのように書いてあるわけです。これは読み上げませんが、弁護士法それから医師法を引用しておりますが、簡潔ながら専門家としての社会的使命、責任がきちんと掲げられている、そういう第一条を持っているわけです。
  7. 建築士というのは、国民生活の場の快適性、安全性の確保、それから美しい景観の創出、我が国の伝統文化の維持、深化、再生等々課題を持っているわけです。こういうことがまず最初に掲げられなければならないと思います。
  8. そうした第一条を掲げた上で、その法案の中身には、現在の根本的な問題である設計監理業務の独立はどうやって保障するのか、今までの歴史上の議論も踏まえてそれの解決の方向を示す必要があります。
  9. それから報酬規程、これはダンピングが横行してそのために粗悪な設計が多くなっているというのは実情であります。そういうものがどうやったら解決できるのか、そういうことも含めて、全体として問題にしなければならない。そういうことをやるのか、やらないのかですね。
  10. 実際には、今回の法案というのは、そういうところまで触れておりませんから臨時的なものだというふうに思うんですけれども、臨時的なものでありながら、ついでにほかのこともやるというようなことを含んでいるというふうに感じます。
  11. 今回の改正を見ますと、構造のついでに設備もというような感じを受けるわけです。
  12. 設備設計一級建築士というのをつくるというのは、これは机上の論ではないかという感じがします。一級建築士でこれに該当するというか、これからそういう資格を取れる人というのはもう非常に限られています。一方、これは建築士法の二十条の五で決まっていて、しかも施行規則の第二章の三で詳しく規定されている建築設備士というものがあるわけですね。この制度が二十年も続いていて、しかも建築設備士は三万人以上が活動しているわけです。この人たちが問題を起こしたという事件が起こっているわけではないわけです。なぜその人たちではいけないのか。ここは非常に説明不足ですし、むしろ設備設計一級建築士というのをつくるというのは、実際にはなかなかつくれませんから、現場で混乱することは必至であります。そういうものを一緒にやろうとしているんですね。構造のことが臨時に問題になったにもかかわらず、ついでに設備のことを持ち込む、こういうことをやっております。
  13. それからほかにも、これもちょっと気になったんですが、指定登録機関をつくって、従来は国土交通大臣都道府県知事に登録していたのを、全部その指定登録機関を民間にするということであります。さして問題がないようにも見えますが、一方で言うと、建築確認を民間に開放したのと同じような問題を含んでいるかもしれません。少なくともこの問題は建築諸団体の中でも十分に議論されていないわけですが、そういうことが、今回、相当な条文数で載っております。こういうさまざまなことを一緒にやろうとしている、しかしこれは問題ではないかというのが私の意見です。
  14. 去年から民間確認機関のことが問題になりまして、この六月の議会で、民間確認機関の指定要件の強化とか、特定行政庁による指導監督の強化、その他の業務の適正化ということが決まったわけです。これはこれでいいんですが、これで全面的に解決したのではなくて、むしろ確認はきちんと公的に地方自治体が行うべきなのでありますが、しかし、今それをすぐ言っても、その能力がないわけです。人的能力も含めて、今すぐ民間確認機関をなくすというわけにいかない。したがって、緊急の問題としては、六月に決めたような業務の適正化でやむを得ないかと思うんですが、本格的にやるとすれば、そこは再検討が必要なわけです。
  15. 建築の確認というのは、結局、国民の生活、活動の場の安全を確保するということだけでなくて、地域空間の活力を向上する、美しい町並み景観の持続的な創出、その中には伝統文化的な景観の保存という問題も含みます。それらすべてを含めて、都市計画法、景観法を含めて適合しているかどうか、この場所にこういう建物が建つということは地域の活性化のマイナスにならないか、そういうことまで判断すべきものです。
  16. 姉歯事件以来、これは構造が安全かどうかというのを見るのが確認だというような誤解も一部にありますけれども、本来の確認業務をやるとすれば、首相が言っている美しい国をつくるというのは、ここでやらなければならないわけですね。
  17. そうだとすれば、確認というのは、基本的には民間企業でできるものではありません。例えばやったとしても、それが公平であるという保証がない。建設会社や住宅メーカーが出資している株式会社が、そんな公平な判断ができるはずがない。あるいは公平な判断をしたとしても、国民から見て公平な判断というふうに信頼ができない。本来、確認は、基本的に国家的な業務としてやらなければいけないと私は考えます。
  18. 百歩譲って、単体規定、建物一つ一つの安全性などについては民間確認機関ができるとしても、集団規定ですね、その地域にとってその建物は将来にわたって問題がないかどうかというような検討は、これはやはり地方自治体でやるべきだろうと思いますし、これから陣容を整えてそのようにしていくべきではないかというふうに思います。
  19. 一括下請禁止ですね。例外をつくるべきではないと思います。今回、そこのところは強化されているとは思うんですけれども、多少抜け道がつくってあるわけですね。三行目に書きましたが、何々以外の建設工事で、発注者の書面による承認を得たときは、一括下請を禁止しないものとすること、こういうふうになっています。これは例外ですね。こういうのをやりますと、これは抜け穴に使われる可能性があります。
  20. 建築というのは発注者がお金を出してつくるので、発注者に非常に決定権限はあります。決定権限はあるんですけれども、実際には、多くの人がその建物を使ったり、その建物に出入りしたり、その建物を見たりするわけですが、その人たちは発注者とは別な人なんですね。ですから、その人たちの利益をどう守るか、ここのところに建築士の仕事というのは非常に重点を置かなければならない。
  21. 建築士の行う業務は、法令を守りつつ、建築主の利益を保護するために行わなければならない云々とあるんですが、ここは当然書きかえて、建築主の利益及び建築物の実際の使い手の生命、生活を保護するため、また、町並み景観を創出するため云々、こういうふうに書くべきなわけです。こういうことをきちんとやるには、教育も含めて、国民全体の課題にしていかなきゃならないわけですね。
  22. そういうことを考えますと、今回の法案については、やはり全体として臨時的、緊急の対処なんであって、今後、建築行政をめぐっては、根本的に検討する必要があるのだということをぜひ御確認願いたいというふうに思います。