建築基準法の改正よりもファイナンスの方が大きい

不動産株に下方修正相次ぐ、整理と成長の二極化が進行

  1. 不動産株に業績見通しの下方修正が相次ぎ、今後の見通しについて不安視する声が出ている。
  2. 昨年施行された改正建築基準法による工事遅延という要因にとどまらず、不動産市況の悪化や融資縮小といったファイナンス面での不安が大きくなっており、収益環境は一段と厳しさが増してきた。
  3. 業界の中では「淘汰(とうた)と成長の二極化」が進行するとの見方もある。
  4. これまで不動産業界の下方修正要因というと、昨年6月に施行された改正建築基準法による建築確認が長期化で、販売物件のずれ込みが大きかった。
  5. 実際、今回修正したレオパレス21では、下方修正の主な理由としてアパート建築請負事業で計画の一部の竣工が翌期になる点を挙げている。
  6. しかし、ここにきて不動産融資の縮小、それを背景に年初来からの急激な市況悪化が、収益の鈍化をもたらしている状況だ。
  7. サンフロンティア不動産の広報担当者によると「収益環境の悪化の要因としては、改正建築基準法の改正よりもファイナンスの方が大きい」
  8. 「とりわけ転売的な案件については、資金を出なくなっているようだ。一般的に国内金融機関は総額の7割しか融資しないため、それ以外の調達がストップすると資金が流れなくなる」(証券系調査機関の不動産担当アナリスト)
  9. 再生事業をメーンとするアルデプロサンフロンティア不動産では、売却先が決まりながら顧客の資金手当てが付かずにキャンセルとなる案件も出ている。
  10. 「郊外の案件では、モデルルームの集客が1年前の半分といった例も出るなど、目に見えて状況が悪化している」
  11. 「今のところ都心のAクラスにランク付けられるオフィスやマンションには引き続きニーズが強く、大手や比較的落ち込みが小さい中堅は、これらが収益の支えになっている」
  12. 損切りを進める一方、需要おう盛な都心の案件に特化して収益拡大を目指す」
  13. ファイナンス面から、当面の業界は整理と成長の二極化が進行する」
  14. 「供給面では首都圏の優良物件に絞る半面、需要面は海外ファンドの開拓を進める。アラブマネーやアジアマネーなどのニーズが強く、直接的ではないにせよ、これらの取り込みを狙っていく。こうした取り組みができない企業は淘汰されるだろう」
  15. 郊外物件を中心とする販売業者や都心の優良な物件を有しない賃貸業者の収益は厳しさを増すとみられている。
  16. 先行き国内景気が冷え込んだ場合は、現在は好調な都心のオフィス需要も冷え込み、業界が全体的に沈む可能性も出てくる。「大手不動産株の大幅な株価調整は、そこまで織り込んでいるようだ。収益下支えとなるオフィスビル需要の動きを計る目安として、08年3月期の本決算発表で明らかになる空室率に注目したい」