「対震デザイン」

建築学会/建築学とデザインの融合へ取り組み展開/「対震デザイン」など研究

  1. 日本建築学会(会長・斎藤公男日大教授)は、建築学とデザインの融合に向けた取り組みを加速させる。
  2. 08年度に、良質な建築を増やすための構造設計と、既存建築物に新たなデザインを施して建物の価値や地震に対する安全性を高める方法を探る特別委員会をそれぞれ始動させるほか、建築デザインの発表会や建築を支えるエンジニアリング・デザインの展示会も新設する。
  3. 学術、技術、芸術の分野・領域を超えた総合的な視点での活動を強化。
  4. その成果を社会に積極的に発信していくことで、耐震偽装問題で失われた建築界への信頼の回復を図るとともに、建築の魅力を次世代にアピールすることにもつなげる。
  5. 建築学会は、耐震偽装事件を踏まえ06年9月に「健全な設計・生産システム構築のための提言」をまとめ、取り組むべき課題を提示。
  6. これを受け、中立的公器として分野横断的・総合的な視点で議論や活動を行っていくため、建築(アーキテクチャー)と技術(エンジニアリング)の融合に向けた取り組みをスタート。
  7. 07年度は技術部門の設計競技として「既存建築物の耐震改修デザイン」などが企画・実施された。
  8. 建築学会はこうした活動を一段と強化するため08年度、「建築学からみたあるべき構造設計」「既存建築を生かす対震デザイン」の二つの特別調査委員会を新たに設け、活動を始める。
  9. 建築学からみたあるべき構造設計特別調査委員会(委員長・和田章東工大教授)は、高い能力を持つまじめな構造設計者が社会の信頼を受けて仕事ができる方法を考え、的確に設計された良質な建築を増やしていく方策を探る。
  10. 日本建築構造技術者協会(JSCA)など実務者団体とも連携し、構造設計の実態調査、検討課題の設定、出版物の発行などに取り組む。
  11. あるべき構造設計をテーマに若手を交えた討論会も実施する。
  12. 既存建築を生かす対震デザイン特別調査委員会(委員長・松村秀一東大教授)は、地震に対する安全性を確保しながら建築物や都市空間に新たなデザインを施し、建物の経済・利用面での価値や都市空間の豊かさを高める方法を探る。
  13. 「対震」は、耐震・免震・制震を包含した工学用語で、委員会名の「対震デザイン」には、地震に対する強度を高めながら既存建築の保存・再生を図る意味合いを込めた。
  14. 活動は、住宅地や中心市街地、公共建築など五つのワーキンググループを設けて進め、最終的には5部作の学会叢書の刊行や教育ガイドラインの作成などを目指す。