講習会「建築物の耐震性能評価手法」

講習会「建築物の耐震性能評価手法」 - 建築学会

  1. 我が国における建築物の耐震設計は、中地震動を対象にした許容応力度設計に基づく一次設計と、大地震を対象として架構の終局耐力時のエネルギー吸収性能を評価する二次設計が行われている。
  2. 二次設計は、時刻歴応答解析を用いた超高層建物等の設計に始まり、1981年の建築基準法改正により一般建物にも新耐震設計法(保有水平耐力計算)による検討が行われるようになった。
  3. 二次設計も保有水平耐力計算に加えて、2000年の建築基準法改正により限界耐力計算が、2005年にはエネルギーの釣合いに基づく耐震計算が告示化された。
  4. 2005年に発覚した構造計算書偽装事件への対応からも、これらの耐震計算法の適用範囲と検証可能な建物の耐震性を明らかにすることが求められた。
  5. さらに、時刻歴応答解析も、弾性挙動に近い領域での最大応答値に対する検証から、海溝型巨大地震による長周期地震動に対しては、最大応答値に加えて累積損傷値を含めた終局状態を検証することが必要とされた。
  6. 本講習会では、耐震設計小委員会が7年の歳月をかけて議論した成果である『建築物の耐震性能評価手法の現状と課題―限界耐力計算・エネルギー法・時刻歴応答解析法』の解説を行う。
  7. 本書では、建築物の終局耐震性能を評価する限界耐力計算、エネルギー法、時刻歴応答計算を比較・検討することで、計算法ごとの適用範囲や解析結果に含まれるゆらぎ(ばらつき幅)を評価している。
  8. さらに、耐震・免震・制振構造などの構造形式や構造種別に対して横断的に耐震性能を評価できる詳細な検証法である時刻歴応答解析と、簡易な耐震設計法である限界耐力計算やエネルギー法とを組み合わせて、合理的で分かりやすい建築物の耐震性能評価方法を明示することが目標である。