とにかく仕事が回らない

改正建基法1年(6)/建築実務者の混乱と苦闘の日々

  1. 「住宅瑕疵担保履行法には、建築主が正しくて工務店はすべて悪者という固定観念を感じる。工務店をだまそうとする建築主など山ほどいる。悪意の建築主に対する罰則がないのはおかしい」
  2. 「取引先の構造設計事務所が、確認検査機関と構造計算適合性判定機関の指摘に対応できなかったため、私は確認申請を取り下げ、事業を断念した。担当した構造設計事務所の所長は行方不明になった」
  3. 「確認検査機関と構造計算適合性判定機関から理不尽な要求をされ、発注者からは苦言を受けた。電話対応の恐怖から、仕事場にいるのを避けるようになった時期がある」
  4. 「とにかく仕事が回らない。毎月150時間を超える残業をしてもスケジュールを守れず、意匠設計事務所からどやされる。担当者を替えろといわれても、ほかに社内で担当する人間などいない。72時間連続で不眠の作業をしても間に合わず、しまいには意匠事務所の担当者が職場にやってきて、作業する私を隣の席で監視していた」
  5. 「適合性判定機関から構造計算、施工計画に至る詳細な質疑がきて、確認申請図書を作成する手間がぼう大になった。ひたすら残業をして頑張ってやってきたが、責任と作業量ばかりが増え、精神的にも肉体的にもぼろぼろになり、死ぬことばかりを考えるようになった。設計スケジュールについてのプレッシャーがすごく、構造について技術提案をしようとしても、資料をつくる暇がないのであきらめざるを得ない。やる気を失って3月いっぱいで構造設計の職場を去った。いまは担当していた物件の後始末をしながらハローワークに通っている」
  6. 「月給が手取りで20万円いくかどうかの自分が、工事費何十億の建物の安全性確認証明書に何件か署名した。これで構造の安全が担保されたことになるのだろうか。後で構造設計ミスが発覚したらどうなるだろうと日々不安だ。所長がマスコミにつるし上げられる夢をよく見る。自分は逃げるつもり。建築士向けの保険が頼りだ」