談合による損害賠償|沖縄県

談合の損害賠償,JVも連帯責任/沖縄県,地元企業191社対象

  1. 沖縄県は、地元建設企業191社に対し、談合による損害賠償として約109億5700万円を請求することを決めた。
  2. 5日に沖縄県建設業協会に説明したほか、14日にも191社を対象にした企業説明会を開く。
  3. 焦点だった違約金条項設定以前の扱いについて、県は落札率を根拠の1つにして契約金額の10%を請求する。
  4. 地元建設業界が求め続けていた要望が事実上拒否されたことに、「非常に厳しい。がっかりした」(沖縄建協)などと失望感が広がっている。
  5. 県が決めたのは、
  6. ▽対象工事は2002年から05年の間に発注した土木・建築370件
  7. ▽約款に違約金条項(損害賠償)を規定していない02年分を含め損害賠償額は一律契約額の10%
  8. ▽違約金条項を規定した03年以降の契約分は、JV構成員も損害賠償について連帯責任を負うため、JVスポンサー企業が破たんなどで履行できない場合はJV構成員に請求
  9. ▽02年契約分はJV構成員への連帯責任規定がなかっため、JVスポンサー企業が破たんしても構成員の責任は問わない
  10. ▽財務状況に応じて5年以内の無利息・無担保の分割納付を認める。
  11. ただし5年後の納付状況によって、さらに履行延期の特約をするかどうかを検討
  12. ▽累積赤字など経営状況が厳しい場合には10年の分割納付を認める――など。
  13. 県の主要地元建設企業に対する損害賠償請求は、06年3月に公正取引委員会が02年4月以降の土木・建築工事を対象として136社に対し課徴金納付を命令したのが契機だった。
  14. ただ、違約金条項規定以前の02年契約分についても損害賠償をする場合、どの程度にするかが焦点の一つになっていた。
  15. さらに、県全体の就業者数の12%以上を占める最大の基幹産業である地元建設業が課徴金だけでなく県に損害賠償を支払うことで、県経済へ影響を及ぼす恐れがあったことを建設業界だけでなく沖縄県議会も問題視し、06年に支払い猶予期間の設定を県知事に求める決議をしていた経緯がある。
  16. 県は07年1月に、損害賠償金納付計画書請求手続きの一時中止を決め、公取委から違反認定を受けていない県Aランク企業に賠償請求するかどうかも含め再検討していた。
  17. 沖縄建協も07年11月、会員企業調査に基づいた厳しい経営実態を踏まえ、損害賠償対象を違約金条項を規定した03年以降を対象にし、可能な限り減免するほか、JV工事の場合の連帯責任を求めないなどの要望を提出していた。
  18. しかし結果的に県は、違約金条項規定以前の損害賠償についても、「談合が発覚する以前の平均落札率が97.9%。(公取委が対応し)談合がなくなったあとの一定期間の落札率が84.2%で、その差が13.7%。他の自治体の動向も踏まえ10%と判断した」(土木建築部)。
  19. 今後の焦点は、落札率に基づいて判断した違約金条項規定前の10%の損害賠償請求に対する企業の対応と、191社のうち公取委から談合認定を受けずJV構成員として共同責任の対象となるAランク55社の動向だ。
  20. 違約金条項設定前の損害額認定は、他県でも裁判で決着する例も多く、県も「裁判による和解も想定」と視野に入れる。
  21. 一方、JV工事も県が損害賠償請求する最上位ランク特A企業136社のうち、既に21社が破たんした。
  22. JVスポンサーが破たんした場合に構成員に連帯責任を求める03年以降の工事は74件ある。
  23. 損害賠償請求対象になった特A企業の125社がすべて損害賠償額を支払えば、Aランク企業55社の支払い義務はなくなるが、「破たんしていない特A企業でもJVの出資比率に応じて損害賠償の支払いを構成員に求めるケースも想定される」(沖縄県)ことから、県と企業だけでなく企業間でも厳しい交渉が予想される。