告示1206号の見直し

不十分な設計はマイナス補正/業務報酬基準見直し最終案/国交省

  1. 設計業務では、不十分な設計図書を作成した場合に業務量をマイナス補正することも明記する。
  2. 1979年に策定された現行の告示は、建築士が設計の延長として工事監理も実施する前提で作成されていることから、設計と工事監理業務の線引きがあいまいで、それぞれの業務で適切な報酬が得られていない
  3. 設計の標準業務では、施工段階で実施することに一定の合理性がある業務や実施設計図書を補うための設計行為の業務量を示すことで、工事監理業務と切り分ける。設計変更は、追加的な業務の中で明確に位置付ける。
  4. 略算票は戸建て住宅を除いて3つに分けている類型を、施設用途ごとに細分化し、実態調査を踏まえた上で意匠、構造、設備の床面積に応じて、1時間当たりに必要な人数(人時)の業務量を示す。
  5. 業務量の算出に当たっては「人日」換算を「人時」に改める。
  6. 工事監理業務については、図書と工事の具体的な照合方法を定めたガイドラインを策定する。
  7. 同省は、08年8月に告示の改訂内容を固め、小委員会での議論を経て同年11月に告示を改訂する予定
  8. 大宇根弘司委員(元日本建築家協会会長)は「設計図書が完成していても、工事中にスタディーを継続して、品質の高いものをつくるために手直しするのは標準業務だと思う。これは未完成の設計図書とは違う」と問題を提起、「未完成」という言葉の見直しを求めた。
  9. 岡本賢委員(日本建築士事務所協会連合会建築設計制度等対応特別委員会副委員長)も「施工中にデザイン精度を高める行為は標準業務とすべきだ」
  10. 宿本尚吾国交省住宅局建築指導課企画専門官は、「大宇根委員のようにきめ細かく決めていくスタディーは評価したい。しかしどこの事務所でもやっているとは言えないのではないか。そうしたものは追加業務として区分した方が、施主にとっても分かりやすい」
  11. 北泰幸委員(建築業協会生産委員会設計部会副部会長)、牧村功委員(建築設備技術者協会会長)は、「生産設備、設備機器などは日進月歩で変わることも多い。とりあえず現在の考え得るものを盛りこむ。これは未完成ではない」
  12. 古阪秀三委員(京大大学院助教授)は「一生懸命やっている人とそうでない人が同じではない。そのために追加という考え方が必要」
  13. 峰政克義委員(日本建築士会連合会副会長)は「施工で決めた方が合理性があるものも多い」
  14. 大森文彦委員(弁護士)は「文章の書き方は合理性があるかどうかでしか書きようがないと思う。例示を挙げると収拾がつかない」
  15. 議論の結果、「未完成」の表記は見直される見通し

国交省/建築士報酬基準見直し案/設計と監理の分離明確化、4業務に再構築

  1. 現状の工事監理業務には、本来は設計業務としてやるべき内容が含まれている実態があるとして、業務報酬基準を▽設計業務▽監理業務▽監理に付随するその他業務▽追加的業務−の4分類に再構築する。
  2. その上で、追加的業務を除く部分について、床面積ベースでの業務量を定める。
  3. 1人1日当たり(人・日)で示している業務量も、時間当たりの「人・時」の形に変更する。
  4. 具体的な業務量は、本年度内に行う実態調査を基に算定する。
  5. 設計に関する標準業務には、「基本設計」や「建築主の要求や法適合性、施工の実現性を満たした実施設計図書を作成する業務」に加え、「工事施工段階で行う方が合理的な実施設計に関する業務」を位置付ける。例えば、設備機器などで着工前は仕様の確定までにとどめておき、着工後に詳細な設計を行うケースは、「工事施工段階で行う設計業務」とみなし、建築士法で定める狭義の工事監理とは切り分ける。
  6. 建築工事の契約に関する事務や指導監督については「工事監理に付随するその他業務」とする。
  7. 不十分な設計図書を作成した場合には、業務量を目減りさせる形で補正することも示す。
  8. 工事監理や追加業務に対する適切な報酬を建築主に求めやすくする。
  9. 業務報酬基準を定めている告示1206号については、標準業務と追加的な業務を一体化させた形に改定する。
  10. 難易度などに応じた施設類型の詳細化や、▽意匠▽構造▽設備▽統括業務−などの種類に応じて業務量を示す。
  11. 設計図書と工事との照合部位などを具体的に示した工事監理マニュアルを作成する。
  12. 中間検査・完了検査時に提出する状況報告書の記載も充実させる。

見直し案まとめ 業務報酬・工事監理小委

  1. 施設類型を細分化した上で難易度の要素も取り込む
  2. 新たな業務報酬基準は「建築主が容易に理解できる業務報酬基準体系とする」ことを基本に据えた
  3. 6月の改正建築基準法施行に伴う業務量の変化(増加)に配慮することも求めた
  4. 告示見直しにかかわる実態調査は建築関係団体の協力を得て、08年1月下旬から実施する
  5. 設計・工事監理契約締結前の重要事項説明時に交付する書面や契約締結時に交付する書面に、賠償責任に関する保険加入の有無を義務付ける