「倫理と能力を欠いた建築士により大問題が発生した」

構造計算書偽装問題に関する緊急調査委員会の最終報告について
「今回、倫理と能力を欠いた建築士により大問題が発生した」
この結論から見直しが始まっているらしい
http://www.mlit.go.jp/kisha/kisha06/15/150406/03.pdf
という事で、報告書の一部抜粋。

  1. 建築技術は高度化してきたものの、スクラップ・アンド・ビルドの思想が根底にあるため、設計、建設の技術が往々にして「よりよい消耗品」を作る技術、即ち、いかに早く、安く作るかという面で利用されることが一般化した。これが、デベロッパーに、安さを追求し、性能は最低限ぎりぎりに向かわせた。同時に倫理、技術に劣る建築士に偽装を誘引し、施工の手抜きから欠陥住宅へと繋がっていく。
  2. 建築士の役割が社会で十分理解されていないため、建築士間の技術力に基づく適正な競争による淘汰、自助努力による切磋琢磨、適材適所などの原理が働かず、市場での選別が不十分な状態にある。
  3. 今回の再発防止策の一環として、確認申請書に担当した全建築士の氏名記載の義務付けが検討されているが、それぞれの建築士の責任分担のあり方も示す必要がある
  4. 職能団体への加入の義務化の検討と併せて、(CPD)のような継続教育制度の導入も検討するべきである
  5. 建築士は、雇い主である建築主、施工業者からの早く、安くという圧力と建築物の性能の確保というジレンマに常に相対している
  6. 建築士が所属する各職能団体の倫理綱領を、業務上実際に遭遇するジレンマ、トリレンマに対してどう行動すればよいか、具体的に教示できる内容に改めることが望ましい
  7. 諸外国では、公務員、専門技術者の受験資格として倫理が必須科目となっているという指摘があり、我が国でも、建築士の養成課程で必須化するべきである
  8. これまで日本社会は、性善説が主流だったが、経済優先の今日、人命に関わることは、万一の事態を想定し、性悪説に依拠して対応するべきである。
  9. より良い建築を作ってゆくためには、技術者の能力を最大限に発揮できる環境を整えることも重要である。責任や罰則の強化と併せて、その責任の大きさに応じた設計者の待遇改善についても検討すべきである。
  10. 耐震設計は、大地震そのものが人知の及ばない自然現象であり、建築基準法に定める各種の構造計算方法も、地震時の建築物の挙動の再現ではなく、静的な計算法に置き換えた便法であることを踏まえ、構造設計者の熟慮によって進めるべきものである。
  11. マンションのデベロッパーは、わが国では1960 年代に誕生して急速に成長しつつある新しい業態であり、重大な社会的及び技術的責任を担っている。今回の事件にみられるように、瑕疵担保責任を果たせないような業者でも参入が可能など、障壁が低いことは一つの問題であり、施策を講じる必要もある。しかし、安易な参入規制は既存業者を利するだけであり、国民のためにはならない。
  12. 今回、倫理と能力を欠いた建築士により大問題が発生した。
  13. 建築士が責任をもって行った設計行為を確認する公の事務が建築確認である。
  14. 特定行政庁の実務者からは、違反建築の疑いのある物件を発見しても、どこの指定確認検査機関の確認を受けているか分からず、図面もないので、迅速な対応が出来ない状況にあり、制度創設時の趣旨が実現されていないという指摘もある。
  15. 確認審査時における過度なプログラム依存を改めるには、カラープリンターを用いた分かりやすい出力や、審査の質を高めるための計算結果の出力を、プログラム開発会社に提案する必要がある。
  16. 偽装事件の発覚後、一部の特定行政庁で、大臣認定プログラムによる構造計算書以外は、受理しないという指摘がある。大臣認定プログラムであっても、構造計算の内容の適正さを保証するものではないばかりでなく、創造的な構造設計へのアプローチを妨げる結果をもたらすことになるので、コンピュータ技術を自由に使えなくするような運用は改めるべきと考えられる。
  17. 認定取得後にも、いろいろなバグ(不良箇所)の修正、あるいは学会規準の改定を反映させる修正が行なわれ、大臣認定を受けたときとは異なるプログラムが使用されている
  18. 現状では、建築士が、チェックされる側の施工業者の下請けとして雇われるか、両者の技術力の違いから、実際は元請の建設業者の「施工管理」となってしまって、元請建設業者の作成した報告書に判を押すだけとも言われている。
  19. 一括下請負について情報が開示されないと、マンション購入者は名の通った建設会社が、きちんとした施工管理をしていると勘違いをし、悪質な業者がそこにつけ込むこともあり得る。