名古屋地裁は24日、県などの過失を認め、約5700万円の支払いを命じた
- 名古屋地方裁判所の戸田久裁判長は「建築確認の制度は危険な建築物を建てさせない最後のとりでとも言えるもので、高い信頼性が求められる。しかし、愛知県の担当者は問題点を容易に認識できる立場にあったにもかかわらず、建物の安全性を保つための十分な調査をしておらず、注意義務を怠った」
- 戸田久裁判長は「審査を行った愛知県建築主事は安全性を保つための注意義務を怠った」などと述べてホテル側の主張を大筋で認め、県と総研に計約5700万円の支払いを命じた。
- ホテル側は建て替えにかかった費用全額の賠償を求めていたが、判決は、補強工事に必要な額に限定して損害を認め、既に支払われた金額を差し引いて、賠償額を算定した。
- 県の責任について、戸田裁判長は判決で、「高い信頼を寄せる建築主の信頼に応えるべきで、注意義務を負うことがある」
- 県側は、07年の建築基準法改正で新たに指針が定められて審査が厳格になったと強調し、「新たに制度化されたということは、改正以前には厳格な審査は求められていなかったということだ」と主張。原告側が指摘する「見逃し部分」は、審査の対象外だと反論していた。
耐震偽装、県の過失認め賠償命令 名古屋地裁、愛知のホテル建築で
- 県側は「ホテル側が見逃したとする審査対象は法令に定めのない事項で、担当職員は注意義務を負っていない」
県などに5700万円賠償命令=行政責任認定初-耐震偽装ホテル訴訟・名古屋地裁
- 戸田裁判長は「県の担当者は図面上容易に把握できた問題点について、設計者に問い合わせもしていない」「補強工事の限度内でコンサル会社などとともに、責任を負うべきだ」
- 訴訟は、愛知県がどこまで詳しく建築確認すべきかが主な争点だった
- 判決は「一般的に通用する技術的基準に反するような構造設計がされている場合、その真意を設計者に質問すべき」
- 「耐震壁の評価は設計者に委ねられている工学的判断で、確認審査の対象ではない」とした県側の主張を退けた