申請書を受け取ってもらえないことがある|まだ日本で3件しか下りていない

「伝統構法の家がつくれない!」実務者の悲鳴に国交省が回答

  1. 2007年6月の改正建築基準法の施行後、伝統的な木構造の建築確認申請がほとんど受け付けられない状態が続いている
  2. パネルディスカッションには越海興一・国土交通省住宅局木造住宅振興室長も参加した。国交省が進めている対策を説明したが、事態の短期的な解決が難しいことが明らかになった。
  3. 建基法は、確認申請する建物を各構造の仕様規定に合致させるか、あるいは適切な構造計算によって安全性を確認するかのいずれかを求めている。だが、伝統構法には仕様規定にそぐわない部分、一般的な構造設計法で評価しにくい部分が存在する。2000年の改正で「限界耐力設計法」が利用可能となり、いったんは建築確認を得られるようになったものの、07年6月の改正で審査が厳格化され、同設計法の審査のハードルが上がってしまった。
  4. 「頑張って限界耐力設計法を覚えたのに、同設計法を使うと自動的に構造計算適合性判定機関(適判)に送られて多額の手数料を取られ、しかも実質的に確認が得られない。限界耐力計算を使った建築確認は、まだ日本で3件しか下りていない」
  5. 「大工技能には、手で覚える、体で覚えるものも数多い」
  6. 「新たに伝統構法の住宅の新築を受注した。限界耐力設計法を使ってこれから確認申請をするところだが、確認機関に申請書を受け取ってもらえないことがある。国交省にはこの設計法で建築確認がきちんと得られるように、扱いを考慮してほしい」
  7. 国交省の越海室長らがパネルディスカッションで明らかにしたのは、今年から3年間にわたって、E-ディフェンスでの実大振動実験などで伝統構法の再検証を行い、最終的に「伝統構法を考慮した仕様規定」を告示する
  8. 国交省は限界耐力設計法の柔軟な運用ではなく、新たな仕様規定を設けることを掲げた。それはなぜか。
  9. 大橋好光・武蔵工業大学教授は、伝統構法を支持する設計者らが、限界耐力設計法を“建築確認を突破する道具”と捉えてきた風潮に、警鐘を鳴らす必要があった
  10. 「限界耐力設計は、複数の構造要素をまとめて一質点系の構造体と見なし、荷重変形関係モデルなどに照らして安全性を検証する手法。対象となる建物全体を、そもそも本当に一質点系の構造体として見なして良いかなど、設計者や判定員には高度な工学的判断が必要だ。在来木造の仕様規定に基づく設計が『小学生レベル』なら、限界耐力設計は『大学生レベル』。このように高度な設計法を安易に簡略化するのは危ない」(大橋教授)。
  11. 大橋教授は、「設計者だけでなく、建築主事(判定員)にも能力差があることを、行政側が認めたのが適判」限界耐力設計法が高度な設計法であるがゆえに、行政側も審査できなくなったと見る。
  12. 問題点は四つある
    1. 木構造を理解している設計者が少ない
    2. 判定員も少ない
    3. もともと限界耐力計算のチェックが難しい
    4. 施工が図面通りにはいきにくい
  13. 審査側はこの状況で厳密なチェックを求められており、『あまり見たくない』というのが本音だろう。
  14. 昔からやっていることをなぜ今できないのか。建基法はどうしても守らなければならないのか」
  15. 工学院大学教授の後藤治氏は、「適法化は大前提だ。これまでも我慢してきたのだから(あと3年も待てるのではないか)

。oO( このような状況でも制度設計は正しかった。周知不足が原因だと言う事で…