超塑性合金制震ダンパー

世界で唯一の特殊合金を使ったブレースタイプの制振ダンパーを開発・初適用

  1. ZnとAlの合金に、ナノテクを駆使した特殊な加工熱処理技術(TMCP処理)を施すことで、室温で金属が水飴のように伸びる超塑性を発現させ、制振部材として必要な特性を得ると同時に、工業的な生産プロセスを確立しました。
  2. 金属でありながら、常温下でも粘弾性体の性質も併せ持った、世界で唯一の室温超塑性亜鉛アルミ合金です。変形性能に非常に優れ、繰り返し大変形を受けても、ひずみ劣化や加工硬化が極めて少ないため、制振材料として理想的な特性を有しています。
  3. 鋼材系のダンパーと違い、繰り返し大きな揺れを受けても加工硬化、ひずみ劣化が極めて少ないため、設計当初の性能をほぼ完全に維持します。そのため被災後に交換の必要がありません。
  4. 地震時の建物の揺れと強風による微小な揺れには大幅な振幅差があり、通常はそれぞれの揺れに対して別の制振装置を設置します。「Zn-Al合金制振ダンパー」は、大小の揺れに対してマルチな制振性能を発揮します。

竹中工務店/メンテ不要の制振技術開発/超塑性合金使用のブレース型装置実用化

  1. 竹中工務店は、地震や風揺れなど幅広い振動に対応し、メンテナンス不要のブレース型制振技術「超塑性合金制振ダンパー」を開発、このほど設計・施工を担当した超高層マンションに初適用した。
  2. 神戸製鋼所が開発した亜鉛とアルミの特殊合金(Zn―Al合金)を活用。
  3. 変形性能などに優れた特殊合金に、竹中独自の座掘補剛機構や接合法、設計評価手法などを組み合わせ、同ダンパーを実用化した。
  4. 今後、新築・既設の超高層ビルを中心に、積極的に技術提案していく。
  5. Zn―Al合金は、金属として一定の強度と、常温下で水あめのように伸び縮みする粘弾性体の性質を併せ持つ世界唯一の室温超塑性亜鉛アルミ合金。
  6. 大きな変形を繰り返し受けても、ひずみ劣化や加工硬化がほとんどなく、メンテナンスフリーの制振材料として理想的な特性を有する。
  7. 竹中と神鋼は01年に同合金を用いたせん断パネル型ダンパーを共同開発し、地震対策でホテルに適用した実績がある。
  8. 超高層マンションなどの居住性・安全性の向上が求められる中、このほど地震と風揺れに対応したブレース型を新たに開発した。
  9. 超塑性現象については、大阪府立大の東健司教授の指導を得ながら、学術的検証などを行った。
  10. ブレース型は、Zn―Al合金を通常の鋼板で挟んだ形状。
  11. 地震時の揺れから強風時の微少な揺れまで、振幅差のある大小それぞれの揺れに対して、内包された合金の伸び縮み具合や材料強度などのレスポンスを適切に変化させながら、振動を効果的に抑える。
  12. 材料の高機能化で装置自体のコンパクト化が図れる。
  13. 竹中が設計・施工を担当した福岡市内の3棟連結超高層マンション「アイランドタワースカイクラブ」に適用。3棟それぞれの最上層2フロアに、それぞれ4基ずつ計24基を設置している。