住み継いでいけるような「いい家」をもった中産階級

国交省木造住宅振興室室長に訊く「200年住宅」

  1. これまで200年もってきた伝統木造の家のことにまったく触れられていない
  2. ビジョンの出所が住宅メーカー、中古住宅取引市場といった業界だったということはあります
  3. これから3年間かけて、伝統木造を法律的に位置づけていくために、数々の実験や分析をやっていきます。
  4. 住み継いでいけるような「いい家」をもった中産階級が育ったかな、というところで、残念なことに戦争に突入して、あっという間に空襲で焼けてしまった。特に都市部の「いい家」はね。それで、戦前に建てられた「いい家」は、今や、古民家再生でもてはやされているような家が、田舎にたまたま残っているぐらいになってしまっている。+終戦当時の話に戻ると、当時はほんとに山に木がなかった。経験のある大工たちも戦死していたりで、担い手である職人も空白。そんな資材・人材不足の中で、都市住宅の再建はバラックづくりから始まったんです。とはいえ、あんまりひどいものが建つと、都市は混乱してしまうので、かなりけちった内容で、それでもあるレベル以下に落ちないような下支えとして、建築基準法が発足したんです。
  5. その建築基準法にのっとった形で、持ち家政策が展開され、軍需に替わる平和産業のひとつとして、住宅産業が生まれてきたんですね。+住宅産業という風に大きくなると、つくり手と施主との信頼関係より、会社としてより多くのもうけをあげなければならなくなります。最低基準である法律ぎりぎりの線でつくるのが、簡単にもうけをあげやすい方法ですから、基準法のハードルすれすれで確認申請を通過するような住宅が、大量につくられるんです。今でもそんな電話がしょっちゅう、建築指課にかかってきますよ。「法律に10.5ミリ以上と書いてあるけれど、10.4ミリではだめなのか」と。つくり手からです。すれすれセーフまでしかねらっていない。その結果、完了検査が終わったその日から、劣化が始まるような貧弱なストックが増えてしまった。バラックすれすれにものをつくる以外にない時代を過ぎても、ストックとなり得るような住宅がつくられない。30年という短い期間での「スクラップ・アンド・ビルド」の繰り返しです。
  6. 耐震性については、大きな地震があっても補修をすれば使えるということですので、ある程度変形はしてもつぶれることがなく、建て起こせばまた使えるという、伝統木造がめざしている性能でいけると思います。
  7. 省エネ基準の一部については、エネルギー消費がほかのタイプの200年住宅より多少増えることを住まい手も納得済みという前提にのっとって、一部緩和または適用除外ということも考える必要があるかもしれません。
  8. かつての中産階級は、不平等があることで成り立ってたんですよね。家父長制があり、男女差別があり、主人と使われる者という構図があり、という中で、家のメンテナンスは女中や下男、あるいは女たちが、家にはりつくようにしてやっていた。そうした下支えがあることはすぐれた資産形成にはつながっただろうけれど。重々しい上下関係が消失した今、維持管理の部分を「住まい手自らが」やっていかなければならないという風になっています。そうなると、メンテナンスやリフォームのしやすさ、住宅の整備履歴がきちんと残されていて業者に手伝ってもらいやすいことなどが、大切になってきます。
  9. 伝統木造は基本的には一子相伝の世界ではあるのですが、担い手が減少している現状にあっては、大工技術のオープン化も考えていかなければならないと思っています。規格化ということではないですが、すぐれた伝統木造の共通基盤が何なのか、といった整理は、できるのではないでしょうか。
  10. 国だけで3カ年のうちに整理するというのは無理な部分もあるので、地方での実験や、伝統型の型式認定にもちこむことに対して助成金を出すなどして援助しますので、国とみなさんとの力を結集していければと思っています。