主筋も切断

主筋も切断、4カ所で 佐久市のマンション

  1. 佐久市内の新築分譲マンションで鉄筋の切断など不正工事が見つかった問題で、施工した東武建設(栃木県日光市)が県に提出した報告書の内容が11日、明らかになった。
  2. 梁(はり)に排気ダクトなどの貫通口を確保せずにコンクリートを打設、その後にコア抜き(穴の貫通)をした際、内部の補助的な鉄筋「あばら筋」だけでなく、主要な「主筋」も地階と2階の計4カ所で切断していたことが分かった。
  3. 水平方向の揺れに対する強度を見る「許容応力度等計算」も、法令で定められた基準を満たしていなかった。
  4. 同社は既に解体を申し出ているため、県建築指導課は建築基準法に基づく指導は行わず、処分権限がある国土交通省に情報を提供する。
  5. マンションは、長野新幹線佐久平駅近くで2月に完成した鉄筋コンクリート地上11階、一部地下1階の「サンクレイド佐久平」。
  6. 県によると、施工図では排気ダクトなどの貫通口を計230カ所確保するはずだったが、8階を除く全階でコンクリート打設後に入れ忘れや位置のずれが計78カ所あることが分かった。このため、後から直径10−26センチのコア抜きをし、50カ所であばら筋(直径10−15ミリ)を、4カ所で主筋(同32ミリ)を切断していた。
  7. 県によると、地階の工事を終えた昨年7月ごろ、貫通口の設置下請け業者から工事の不備の申告を受けた東武建設の現場代理人がコア抜きを指示。下請け業者は、その後も8階を除く各階で貫通口を確保せず、コア抜きを繰り返したという。
  8. 県は「工期が迫っていたために、下請けと現場代理人の調整が不十分だったのではないか」としている。
  9. このマンションの場合、建築士法で工事監理者は一級建築士の資格が必要だが、都内の建築士事務所が現場に派遣した監理者は一級建築士の資格がなかった。同事務所の社長は取材に対し「(一級建築士の)私が責任者で指示を出しており問題ない。ゼネコンに工程管理を任せており、コア抜きも知らなかった。だまされた気がする」としている。
  10. 東武建設の富久田孝夫総務部長は「不適正工事が判明した段階から、補修では済まない重大事態だと申し上げていた」とし、設備業者との意思疎通がずさんとの指摘には「否定できない」と述べた。
  11. サンクレイド佐久平は、3LDKと4LDKの計50戸。2戸が売却、3戸が契約済みだったが、11日までにすべて解約。
  12. 建物を所有する東武建設は、約1億5000万円をかけて解体する方針で、近くJR東日本と協議する。