一朝一夕には育たない

[伝統の大工育成、ピンチ 日田共同高等職業訓練校 新年度入校者ゼロ] / 大分 (大分,日田)

  1. 伝統の大工技術を教える日田共同高等職業訓練校(日田市田島本町)が存続のピンチにある。
  2. 新年度の入校者がおらず、このままでは新年度限りで休校の可能性もある。
  3. 江戸時代の町並みが残る豆田町の家屋を補修する担い手の減少にもつながるとして、関係者は危機感を募らせている。
  4. 同校は、自営の大工棟梁(とうりょう)、工務店など約20の事業主でつくる「日田共同職業訓練協会」が運営する。
  5. 棟梁や建築士が講師となり、くぎを使わずに木材を組む「接ぎ手」などの大工技術や設計、構造力学を教える。
  6. 週1回、2年間(大工未経験者の場合3年)の研修で費用は月3000‐5000円。研修を終えると、2級技能士試験の学科試験が免除される。
  7. 1959年の開校以来、約400人の大工を鍛え、木造建築業界に送り出した。
  8. 伝統的日本家屋が多かった日田でも、5年ほど前から、工場であらかじめ切った木材を金具などを使って組み上げる「プレカット工法」が広がった。
  9. 接ぎ手など伝統技術を知らなくても仕事ができるため、同校の入校者は減少した。
  10. 13日に4人が修了を迎え、新年度の訓練生は5人。いずれも最終学年のため、このままでは新年度限りで休校に追い込まれる。
  11. だが、豆田町に残る伝統家屋や寺社の維持、補修には伝統工法が欠かせない。
  12. 豆田町と同じ重要伝統的建造物群保存地区がある石川県金沢市では、市が年間約5000万円を投じて「金沢職人大学校」を運営する。
  13. 地元の棟梁らが、職歴10年未満の大工を3年間指導。「修復専攻科」もあり、同科を修了すると市から「歴史的建造物修復士」に認定される。重伝建地区の修復に重用されているという。
  14. 同校の楢原浩郎校長(一級建築士)は「伝統工法を受け継いでいく大工は、一朝一夕には育たない。金沢市のような大工育成のシステム作りに行政も協力してもらいたい」と訴えている。