A棟だけでなく全5棟の再計算をやり直していたら
【構造計算書偽造】横浜・偽造マンションの検証、市は計算法“併用”を理由に耐震性不足と判断|ケンプラッツ
- 市は日本建築構造技術者協会(JSCA)による構造再計算の結果に基づきながら、必要な耐震性があるとみたJSCAとは対照的な結論を導き出した。
- JSCAは許容応力度計算および保有水平耐力計算による方法と、限界耐力計算による方法を併用し、西区のマンション「グランドメゾン横濱紅葉坂」には必要な耐震性があると結論付けた。
- 市は12月14日の記者会見で、複数の方法での再計算結果を受け入れず、同マンションを耐震性不足とする見解を発表した。
- グランドメゾン横濱紅葉坂はA〜Eの5棟から成るが、建築確認上は1件の扱いだった。
- 10月に偽造が発覚すると、横浜市は元請け設計者である松田平田設計に、第三者に依頼して耐震性を検証するよう指示した。
- JSCAは松田平田から構造再計算の依頼を受けて、まず全5棟に対して許容応力度計算と保有水平耐力計算を実施し、A棟だけ耐震性不足という結果を得た。
- 次にA棟だけを対象に限界耐力計算を行い、同棟にも必要な耐震性があると見なした。
- 松田平田は11月30日、JSCAの再計算結果をまとめて、横浜市に提出した。
- 横浜市は12月14日の会見で、A棟の耐震性を立証した限界耐力計算の結果を「参考程度」と受け止め、市の見解に反映させなかった。
- 会見に出席した齋藤泉・建築企画課長によると、限界耐力計算という計算法を軽んじたわけではない。5棟で1件となっている建物の一部分だけを、他の部分と違う計算法で検証することを問題視した。
- 松田平田がグランドメゾン横濱紅葉坂を設計したのは、07年6月20日に改正建基法が施行されるよりも前だ。
- 当時の建基法施行令81条は、建物1件に対する構造計算の方法として、許容応力度計算か限界耐力計算のどちらかを用いるよう義務付けていた。
- 市はこの規定を根拠として、再計算については許容応力度計算と保有水平耐力計算による方法か、限界耐力計算による方法のどちらか一方だけの結果を認める方針をとった。
- 「全5棟の算定結果がそろっているのは許容応力度計算と保有水平耐力計算による再計算のほうなので、こちらの結果を尊重することにした。
- JSCAが限界耐力計算でA棟だけでなく全5棟の再計算をやり直していたら、結果を参考程度の扱いにはせずに重視していただろう」と齋藤課長は話している。